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なんでもない、そんな日
貼り付けたような笑顔が癖のようなものですと言うのは、それ以上を聞いて欲しくないから線引きされたんだろうと少し傷ついたのはいつのことだったろうか。
遠い、遠い昔のことのように思えるが、実際はそんな昔のことでもないのだろうとカレンダーを見て思う。最近のあいつはいろんな表情を見せるようになったと思うし、少しばかりではあるが敬語も崩れてきたように思う瞬間がある。
ハルヒに無理やり連れてこられたそいつは超能力者だった、ハルヒが望んだから手に入れられた超能力でこの世界を平和にするために閉鎖空間ができれば戦って、時に怪我をしながらも平気な顔で笑っていた。これが僕の仕事なんです、光栄なことですよと。
本当にそう思っている顔で、声で、そう言う奴になんと返事を返すのが適切なのか、答えがあるなら教えてくれよワトソンくん。

暑苦しい夜中に目が覚めそんなことをぼんやり考えていたのだが、暑苦しい正体でもある横で眠る人物に目を向けると胡散臭い笑顔を貼り付けた男ではなく、少しあどけない年齢相応に見える寝顔をしている男がいた。
俺を抱き枕がわりにしているのか、腹の上にはがっしりとした腕が巻きついている。エアコンは既にタイマーが切れてしまったようで本当に暑苦しい。この状況では起きるのも寝るのも叶わん、助けてくれよとよくわからない助けを脳内で乞うていたのだが、神様はどうやら現在俺のことが嫌いらしい。回されていた腕は抱きつく力を強め、更に暑苦しくなってしまった。
時計を確認しようにも動いてしまえば起こしてしまうだろう、こんなに熟睡している奴を起こすのは忍びない。窓から差し込む光から考えるとまだ5時にもなっていない頃だろう。我慢をしないとならんなと目を閉じ羊の数を数えようとしたときにふと当たった足が冷たく気持ち良かったのでそう、と触れる。冷たい、気持ちいい。
そうこうしている内にあんなに覚めてしまっていた体が睡魔に襲われてくる。
体が沈む感覚、暗く落ちる感覚、ゆっくりと、ゆっくりと。








どうやらその後眠ってしまっていたらしい、エアコンをつける音で目が覚めた俺はその事実に気がついた。
目を開くと目の前にはいつもより少し嬉しそうな奴の顔。なんだ、気持ち悪いな。

「おはようございます、起こしてしまいましたね」

すみませんと謝る古泉に、おはようと返す。今は何時だろうか、空は黒ではなく青くなっているところを見ると無事朝を迎えたのだろうが。

「7時半です、土曜日ですし、今日は探索もないのでもう少し休んでいてもいいですよ」
「そうか、ならもう少し休むか……お前は?」

貴方が寝るのならお付き合いいたしますと、昨晩と変わらず抱き枕代わりにしながら眠りはじめた。
暑苦しいと思いつつも先ほどこいつがつけたエアコンで少し涼しくなってきているからまあいいか、と俺も奴に倣い目を閉じた。

「おやすみ、古泉」


あきゅろす。
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